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『千体坊主2 晴』

「『千体坊主1 雨』」の続き
原著作者「怖い話投稿:ホラーテラー」「なつのさん」 2010/10/09 13:50

「……で?こいつは一体どうしたんだ」
言いながらSが作業台の横に来ても、まだKはSのことに気が付いていない様だった。
僕は今は会話できないKの代わりに、Sに現在の状況を一から説明する。
それに対してのSの感想は「ふうん……」と実に簡素なものだった。
それからKの方に近づいて、「俺には聞こえんな。雨音」と言う。
「――おいコラKっ!」
Kの耳元でSが叫ぶ。僕は驚く。しかしKは反応しなかった。
それを確認して「ふうん」ともう一度Sは言う。しかし、Sその言い方から何か納得はした様だった。
Sがノートを持って何かを書く。そしてKの肩をポンポンと叩いた。
Kが顔を上げた。その目が少しだけ驚いた色の光を放った。
しかし他の感情が見えたのはそこだけだった。Kは歯を食いしばって、暴音という痛みに耐えていた。
僕にはその実際の痛みの程は分からないが、表情だけで十分痛さが想像できる。
Sがノートを指差した。読めと言うことなのだろう。首を伸ばして覗くと、ノートにはこう書かれていた。
『前の雨乞いの時に使ったっていうてるてる坊主はどうした?』
もう喋ることも辛いのだろう、Kは黙ったまま押し入れを指差した。
Sが開けると、透明なビニール袋の中に入ったあの人形達が出てきた。ビニール袋は五つもある。
Sはそれを確認すると、またKの元に戻った。
『これからこの人形を全部捨てて来る。あと、今作ってる奴も一緒にだ』
それを見て僕は驚いた。前に使ったものは良いとしても、何故、今作っている人形まで捨てるというのだろうか。
しかし、Kはその文字をゆっくりと視線を這わすようにして読んだ。そしてSに視線を戻す。
それからきつく目を瞑り、天井を仰いで、Kは掠れた、しかしいつものKの声で言った。
「おーけー、わかった」
理由も聞かずにKはそう言ったのだ。
Sは一つ頷いて立ち上がり、机の上にあった作りかけの人形を集めて、新しくゴミ袋の中に入れた。
そして僕に向かって「半分持てよ」と言った。
混乱していた僕は、はっとして、急いで六つの内の半分を持った。量が多いだけで全く重くはない。

「あーそうだ」
部屋を出る際にSは何か思い出した様に呟き、ゴミ袋を床に置くと、Kの方へ戻って行った。
ノートを手に取って何かを書き、Kに見せる。Kが頷く。
するとSがKの背後に回る。それは一瞬の出来事だった。
Sの腕がKの首に絡みつく。五秒もかからずKは落ちた。
唖然とする僕に、Sは平然と「行くぞ」と言ってまたゴミ袋を手に取った。
「な、なな、なんで?」と訊く僕に、
Sは何でもない口調で「『それじゃ眠れねーだろ』って訊いたら、肯定したからだ」と言った。
「……チョークスリーパー?」
「いや、裸締め」
そう言えば、Sは中学高校と柔道部だったとKから聞いたことがある。
何でも、ものすごく強かったせいで喧嘩を売る輩が絶えず、しかしその全てに勝ったためSはその町の……、
いや、これ以上は言うまい。

近所のゴミ捨て場にでも捨てるのかと思ったら、
Sは自分の車を使って、人形達をどこか遠くへと捨てに行くつもりらしかった。
後部座席に五つゴミ袋を詰め込み、僕は袋を一つ抱いたまま助手席に座る。
車は未だ何処へゆくかも分からないまま発進した。
「なあ、これから、何処行くん?」
「河だ。近所の、汗見川」
Sはそう答える。それは意外な答えだった。
「か、川?」
「そうだ。……ああ、その前に、少しばかり酒屋に寄るぞ」
「さ、酒屋!?」
「酒が要る」
僕にはSの考えがまるでさっぱり分からなかった。
もちろん、夜の河原で酒盛りしようぜ、などと言っているわけではないことは分かる。
しかしなら何故、酒屋に寄って目的地が川なのか、僕の頭では合理的説明を出すことは出来なかった。
どうしてか。何故か。分からない。

「……そもそもがおかしいだろ。その千人坊主ってのは」
「え?」
小さな交差点の赤信号で停まった際にSは話し始めた。どうやら僕の混乱を見てとったらしい。
「お前らは、おかしいとか思わなかったのか?」
「いや、思ったけど……。夜なべで千体もつくらなきゃいけないってとことか……」
「そうじゃなくてだな。
 結果からみても明らかだが、あれは天候を変えるまじないなんかじゃない……。人が人を呪う類のものだ」
信号が赤から青に変わって車は走り出し、僕は腹から胸に掛けて、ぐう、と慣性の力を感じる。
「まずやり方からしておかしいだろう。
 人形に自分の血か唾液を染み込ませるなんて方法は、どう考えても占いや呪術の方面だ。
 明日の天気を変えてほしいと願う対象を、自分の形代にしてどうする。自分で自分に願うのか」
「……かたしろ、って?」
「本物の模倣品ってことだ。呪いのわら人形とかもそうだろ。あれも相手の髪の毛や、身体の一部を用いるそうだから」
僕は自分の抱える数百体の人形を見る。この一体一体全てに、Kの身体の一部だったものが付着している。確かにそうだ。
「二つ目に、千体目が出来た時に歌う歌だ。
 ……実はKの家に行く前に、ちょっとネットで調べてみた。お前が電話で言ってた、千人坊主とやらをな。
 検索掛けたらすぐ出てきた。あるオカルト系の掲示板に、一からやり方全部載ってた。全く賑わってはなかったがな。
 最後に歌ううたは、晴れを願う場合は、有名な童謡の『てるてる坊主』 だ。聞いたことぐらいあるだろ」
そう言って、Sはそのうたの歌詞を口ずさんだ。

てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
いつかの夢の 空のよに
晴れたら 金の鈴あげよ

てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
私の願いを 聞いたなら
あまいお酒を たんと飲ましょ

てるてる坊主 てる坊主
あした天気に しておくれ
それでも曇って 泣いてたら
そなたの首を チョン切るぞ

「……これが、晴れを願う場合の歌なんだそうだ。一方で、雨を願う場合は少し違った歌詞になる」
そうしてSはまた口ずさむ。

ずうぼるてるて ずうぼるて
あした雨よ ふっとくれ
いつかの朝の 地のように
降らせば 赤い飴あげよ

ずうぼるてるて ずうぼるて
あした雨よ ふっとくれ
私の願いを 知ったなら
からいお酒を たんと飲ましょ

ずうぼるてるて ずうぼるて
あした雨よ ふっとくれ
それでも笑って 晴れたなら
そなたの足を チョイと?(※も)ぐぞ

「これが、雨を願う場合の歌詞。どちらも、大した変りは無い。
 三番目の最後の部分が、どちらも願いが叶えられなかったら危害を与える、という内容だ。
 実際にある童謡でも、ちょん切るとか言ってるしな」
「それが、耳の中に降る雨と、どう関わるん?」
「『そうされないために人形達は一生懸命天気を変えようとするのです』」
「え?」
「ネットの掲示板にあった言葉だ。やり方を説明した部分のな。
……もしも人形につばや血を付ける行為が、人形を限りなく『生きたモノ』 に近づけるためだとする。
そうして吊るされた千体の人形に、もしもほんの少しの意思を持ったとして、その意思は何のために使われる?」
「何のため……」
「天候を変えるためだ。しかし、現実はそんなに貧相なものじゃない。天気は気象にのっとって動く。変わらない。
 だとしたら、首を切られないために、足を?がれないために、千体の人形に変えることが出来るのは、どこだ?」
Sはゆっくりと続けた。
「それは頭だ。人間の脳味噌の中の、僅かな部分」
僕は黙ってSの話を聞いている。腕の中の人形達が何だかざわついている気がする。
「勘違いすんなよ。俺は別に、人形に命や意思が宿るなんて思っちゃいない」
そこでSは少しだけ笑った。何が可笑しかったのかは僕にはわからない。
「……つまりは、『そういう筋道』が、意識下か無意識かは人次第だろうが、
 この千人坊主を行うプロセスの中で、『出来上がって』しまう。
 ……千個も作った後なら、時間もかかって集中力も使ってるだろうしな、暗示に掛かりやすい状態ってわけだ。
 『部屋から出てはいけない』っていう注意文句もここに掛かって来る。
 時間を置いて作らせない、一気に集中的にやらせる」
Sの言葉によって、頭の中に一つの話の道筋が浮かんでくる。けれども、それは決して気持ちのいいものじゃない。
「あそこにアレを書きこんだ奴の気が知れないな。愉快犯って奴か。
 そう言う意味じゃあ、解決策と思しきものを暗に示してる、って点でもタチが悪い。
 雨が降り続ければ、人は晴れ間を望む。ああいう形でセット出だされれば、誰だってもう一方が解決策だと思う」
どくん、と心臓がはずむ。Sの言わんとしていることが理解出来たからだ。
雨を願って、Kの頭の中に雨が降る様になった。だとしたら、晴れを願えば……。
「これは憶測だが……目に関することじゃないかと、俺は思う」
光。光のイメージ。目の前で輝く何か、時を追うごとにそれはどんどん激しく眩しくなっていって、ついには……。
「俺は、幽霊とか超能力とか、基本的に信じていないが、『呪い』はあると思ってる。いや、あってもいい、と思ってる」
車は目的地である汗見川の川沿いに建つ、一軒の個人経営らしい店の前で停まった。
看板には『酒・タバコ』 とあるが、もうシャッターは閉まっている。
「あるプロセスを通して、生きた人間から生きた人間へ。
 その間に意思と脳みそがある以上、ある程度の何かが起こっても不思議じゃない」
そう言って、Sは一人車から降りていった。
そしてシャッターの横の勝手口の前に立ち、ノックした。
しばらく間があってから僅かに扉が開く。
そこでSが二言三言何かを言うと、ドアの隙間が大きくなって、Sは店の中に入って行った。
次にSが出て来た時、その手には一升瓶が抱えられていた。
「これ持ってろ。じゃ、行くぞ」
「……S。ここの人と、知り合いなん?」
「そんなとこだ。一番からいのを選んでもらった」

そして車は近くの河原へと降りる道を進んで行く。
タイヤが河原の意思を踏む音がした時、Sは車を停めた。
河原自体はそれほど広くない。停めた車のすぐ近くに川の流れがあった。
「さてと。ここらで良いだろ」とSが言う。ただ、僕には何が良いのかは分からない。
Sが車のライトをつけたまま車を降りる。そして後部座席の戸を開いて、人形入りのゴミ袋を取りだす。
「これからやることだけどな。作業には変わりないぜ。ま、人形作って吊るすよりは楽だろうがな」
そう言って、SはさっきKの部屋でノートに書くために使ったペンを僕に渡した。持ってきていたらしい。
「ざっと説明するぞ。人形に顔を書く。記号的な顔でいい、凝る必要は無いからな。
 そんで、一袋分たまったら、酒をかけて、川に流す。分かったか?」
分かったけど、分かんなかった。実際に何をするかは分かったけど、何でそんなことをするのかは全く分からなかった。
僕は曖昧に頷く。
「……まあいい、ただ顔を書けばいいんだ。時間もアレだしな、さっさと済ますぞ」

夜の河原でティッシュペーパー人形に顔を描いてゆく。
ちょんちょんちょん、すうー。で目と鼻と口の出来上がり。簡単だ。一体十秒もかからない。
それでも千二百体は少なくともあるので、僕らはただ黙々と作業を続けた。
一つのゴミ袋に一杯になったら、その中に直接酒を入れる。
そして川に膝まで入って、中身を水の流れに沿って一気にぶちまける。
夜の川にさらさらと流れてゆく人形達は、どこか幻想的で、でもこれはゴミの不法投棄なわけで。

「……役目の終わったてるてる坊主は、こうして川に流すものなんだそうだ」とSが作業中、何処かの折にぽろりとこぼした。
そうなのか、と思った。確かに首や足を取られるよりかは、こっちの方が随分マシな様な気がする。

全ての作業が終わった時、もう東の空から太陽が上り始めていた。最後の一体を見送って、僕とSは同時に伸びをした。
「Kの奴は大丈夫かねぇ……」
「まあ、大丈夫だろ。呪いには呪いをってやつだ」
「何それ」
「知らん。適当に言ってみただけだ。いずれにせよ戻れば分かる、出すぞ」
Sが車に乗り込む、僕も慌てて助手席のドアを開けた。

日が出たと言っても、大学までの道に人影はほとんど無い。戻って来た学生寮の周辺もそうだった。
ここに戻って来た時、僕はどうしてか、
幼少時、母に怒られて家を飛び出したあと、そろそろと足音を立てないで家の窓から侵入した時のことを思い出していた。
なんだか妙に後ろめたいという感覚。
ただ、Sはそんな思いは微塵も感じていない様で、車を降りてずかずかと寮の中に入って行った。
Sは二階のKの部屋まで一直線に、僕はそろりそろりとその後ろをついて行く。
一階の集合ポストに新聞が挟んであったので、ついでにKの分を抜き取る。

部屋の中でKは、僕らが出ていった時と同じ体勢で作業台の横に倒れていた。
Sがその背中を軽く蹴る。起きない。蹴る。起きない。
それからSはKの上半身を背後から抱き起こすと、両脇の下から腕を入れて両手をKの首の後ろで固定する。
その状態でSが「んっ」と力を入れると、Kの半開きの口から「ほひゅっ」と変な音が漏れた。
「……う、うおう!?」
Kが起きた。
するとSはすかさずKの目の前に自分の手をかざし、人差し指と中指と薬指を立て、極々小さな声で言った。
「……何本だ?」
Kは未だに状況が上手く掴めていないらしく、数回高速で瞬きした。
「何本だ?」
Sがもう一度、囁くように訊く。
「う、あ?……あ。えー、三本、だ?」
「よし。耳は聞こえてるな。目も意識も問題ないようだ」
そこでKはようやく自分の変化に気がついたようだった。
「お、おー!ホントだ。雨が、やんでら……」
それを聞いた瞬間、僕の中で張りつめていたものが煙の様な音を立てて抜けていった。
安心すると、油断をしたのか腹の底から大きな大きな欠伸が出た。そのせいでちょっと涙が混じった。
欠伸がてらに、上手く呑み込めていないKに状況の説明をしてやった。
こっちは真剣に話しているのに、相槌がいちいち「へーえ」とか「ほーお」とかばかりだったのが気になったが、
まあ、それは良いとしておこう。
「……呪いかよ。こえーなあ、しかも無差別なんだろ?」
「インターネットの様な環境は、そういうものをばらまくのに最適だからな。
 まあ、そんなもんに迂闊に手を出す奴も悪いんだが」
「あー、いや。マジ反省してる。……今回はキツかった。いやマジまいった。次からはさ、こういうことの無い様にすっから」
「次があったら見殺すぞ。あとバイト代よこせよコラ」
「はっはっは。またまた冗談を」
そんな今日も冴えている漫才コンビの後ろで、僕は先程ポストから持ってきた今日の朝刊の週間天気の欄を見ていた。
六日間晴れマークの続いた後に、ぽつんと傘のマークがついている。
ふと思い出す。
もしも今回のことが呪いのせいならば、
僕がKの耳元で聞いたあの本物の雨の音も、やっぱり呪いの類だったのだろうか、と。
分からない。呪いは伝染するのかもしれない。良い意味でも悪い意味でも。
その証拠に、SがKを絞め落とす際に見せたノートに書いた言葉、机の上に開きっぱなしになっているそれには、
『耳鳴りで眠れないか?』 の下に走り書きで、『目が覚めたら、全部終わってる』 と書かれていた。
もしかしたら、これがSの言っていた呪いには呪いというヤツだろうか。

ちなみに、四コマ漫画『わたる君』 の今日のネタは、
『どうしても遠足に行きたいわたる君が、てるてる坊主を百個作ってベランダに吊るして、
 作り過ぎだとお天道様に呆れられる』
というものだった。
Kに見せると、「ギャグ漫画にリアルで勝つとかオカルトだろ……」などとわけの分からないことを口走っていた。

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[ 2012/04/11 ] ホラーテラー | この記事をツイートする | B!


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