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『夜中に出かけた』


∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part62∧∧

233 :全裸隊 ◆CH99uyNUDE :2012/06/09(土) 00:18:11.87 ID:aHx7E6ui0
連休の山小屋には色々な客がいる。
相部屋になったのは外国人、高校生、若い会社員と、珍しい取り合わせだった。

夕飯を食い、部屋に戻って皆で話しているうちに俺は眠ってしまい、夜中にトイレへ行きたくて目を覚ました。
トイレは部屋を出て廊下の先の方にある。
廊下へ出て玄関を通りかかると、相部屋の会社員が背中を丸めて出発の準備をしている。
午前2時。
「早いね」と声をかけ、小声で話し、その日の行動予定と目的地を聞いた。
やがて靴を履き終え、ザックを背負い、ヘッドランプをつけ、彼は出かけていった。

暗い部屋に戻り、ベッドに目をやると、そこには今出かけたばかりの彼が寝ている。
声が出そうになり、不思議に思い、声をかけようかと少し迷い、結局そのまま俺は自分のベッドに戻った。


234 :全裸隊 ◆CH99uyNUDE :2012/06/09(土) 00:26:31.05 ID:aHx7E6ui0
朝起きると彼の荷物はベッドの上にある。
食堂へ行き、彼の正面に座った。
飯を食いながら、夜中の2時に彼を見送ったことを話した。
彼は俺の話を最後まで聞き、「ふぅん」と呟いた。
「たまに聞くんですよ、その話。山で自分が夜中に出かけたって話です」
何が起こっているのだろう。俺は勿論、彼にも分からない。


235 :全裸隊 ◆CH99uyNUDE :2012/06/09(土) 00:29:28.20 ID:aHx7E6ui0
「ただね、」と彼は言う。
「たぶん今日と明日は、ここから動けないんですよ」
理由を訊ねる俺に、彼は靴が無いからだと言った。
服も荷物も全部残っているのに、靴だけが消えるらしい。
で、翌日か翌々日の朝になると靴が玄関に戻ってくる。
どこを歩くのか毎度びっくりするほど汚れた靴が、玄関にちょこんと置かれていると言う。


236 :全裸隊 ◆CH99uyNUDE :2012/06/09(土) 00:33:12.81 ID:aHx7E6ui0
「出かける自分と鉢合わせしたことは?」
「それがないんですよねえ。
 口惜しいのは、その日は絶対に晴れるってことです。
 それと、泊りが延びるから、余計な宿代ね」
彼は笑った。

朝食後、俺は彼に見送られて小屋を出た。
見上げるだけで頬がゆるむような晴天。
もうひとりの彼はきっとご機嫌だろうなと思い、俺は歩き出した。

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