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『保育園 後編』1/2

師匠シリーズ。
『保育園 中編』の続き
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ20【友人・知人】

411 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:39:09.27 ID:a0GyUdbC0
キッ、となって悦子先生も立ち上がる。麻美先生も肩を怒らせながら立ち上がった。
それに遅れて洋子先生と由衣先生もおずおずと腰を浮かせる。
外へ出るのだと早合点した悦子先生がガラス戸の方へ向かいかけるのを師匠が止める。
「こっちです」
そうして廊下へ出た師匠は玄関の方へ進んでいった。
三・四歳児の部屋の前を通り、事務室の前を通り抜け、玄関の奥にある階段の前で立ち止まった。
「上ります」
そう言ってから階段に足を踏み出す。僕らもそれに続いて階段を上っていく。
二階の廊下にたどり着くと、右手側に戸が四つ並んでいる。
遊戯室、0歳児室、一歳児室、二歳児室。


412 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:40:21.86 ID:a0GyUdbC0
師匠は三番目の一歳児室の戸を開けた。由衣先生が担任をしている部屋だ。
一階と同じようにフローリングの床が広がっている。五歳児室よりも少し狭いようだ。
位置で言うと、一階の三・四歳児室の真上ということになる。
休園日のためか、窓のカーテンが閉められていて少し薄暗い。
全員が部屋に入ったことを確認してから師匠がその窓際に近づいていく。
「仮に、です。雷が鳴った瞬間、たまたま窓際にいたとしましょう。それも窓に背を向けて。
 そして外が光る。雷が鳴る。驚いた由衣先生は振り向く」
師匠はそう喋りながら振り向いて、窓のカーテンに手を突く。
「おっと、まだ外は見えませんね」
嫌らしくそう言ってから、カーテンの裾をつかんで開け放つ。ジャッ、というレールを走る音がして、外の光が飛び込んでくる。
「さあ、カーテンは開きましたよ!タオルはどこに見えます?」
師匠は声を張った。


413 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:41:34.81 ID:a0GyUdbC0
僕らは思わず窓際に近寄って、同じように外を見下ろす。
なんの変哲もない園庭の光景が眼下に広がっている。
タオルは五歳児室の正面の木に引っかけたはずなので、
隣の三・四歳児室の真上に位置するこの部屋からは少し左斜め前方に見えるはずだ。
みんなそちらの方向を見つめる。
しかし白いタオルは見えなかった。
先生の誰かが言った。
「ここからじゃ、角度が」
そしてハッと息を飲む。
師匠が写真を掲げて見せる。
魔方陣が写った園庭の写真だ。


414 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:43:11.84 ID:a0GyUdbC0
「二階の部屋、正確には隣の二歳児室から撮影されたこの写真は、フェンス際の木まで写ってはいますが、
 葉が茂っているせいで、幹に近い枝にかかったタオルは見えません。
 悦子先生の証言では、魔方陣が見つかった時にもタオルはあったということでしたね。
 ちょうどこの写真が撮られた時です。
 なのに、写真には写っていない。
 葉が邪魔して見えないんですよ。二階の窓から構えたカメラからは」
師匠は両手の親指と人差し指でファインダーを作り、ニヤリと笑った。
「つまり、二階の窓からの視線ではね」
こんな風に。そう言って、僕がさっき白いタオルをかけたはずの木に向かって「カシャッ」と口でシャッターを切った。


415 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:44:42.34 ID:a0GyUdbC0
みんな驚いた顔で師匠を見ている。そしてその視線がやがて由衣先生に集まる。
「私じゃない!」
由衣先生はそう言ってその場にへたり込んだ。顔を覆ってわなわなと震えている。
「外には出ました。でも私じゃない」
そう呻いて、啜り泣きを始めた。
他の先生が「落ち着いて、ね?」と言いながら背中をさすっている。
師匠はその様子を冷淡に見下ろしている。
しばらくそうして啜り泣いていたが、ようやくぽつぽつと語り始めた。自分の口から、あの日あったことを。


416 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:46:23.47 ID:a0GyUdbC0

きっかけはその事件の数日前だった。
園児たちがみんな帰宅し、他の先生たちも順次帰っていった後、
由衣先生は一人で園に残って、書きかけの書類を仕上げていた。
七時を過ぎ、その残業にもようやく目処がついたころ、ふいに来客があった。
スーツを着て、立派な身なりをしていたので、保護者が忘れ物でも取りに来たのかも知れないと思い、
門のところまで出て行くと、その男性は頭を下げながら「沼田ちかの父です」と言うのだ。
沼田ちか。
その時初めて不審な思いが湧いた。
とっさに、そんな子はうちにはいませんが、と口にしそうになった瞬間、その名前とそれにまつわる事件のことを思い出した。
数年前、この保育園に通っていた沼田ちかちゃんという女の子がいたことを。
片親だったその子は他の子と家庭環境が違うことを敏感に感じ取り、園でもあまりなじめなかったそうだ。


417 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:48:00.48 ID:a0GyUdbC0
そして五歳児、つまり年長組になったころから、ようやく友だちの輪にも入れるようになり、
毎日だんだんと笑顔が増えていった。
そんなおり、ある週末にお祖母ちゃんにつれられて、買い物に行こうとしていた時、
歩道に乗り上げてきたダンプカーに二人とも跳ねられてしまった。
居眠り運転だった。
お祖母ちゃんの方は助かったが、ちかちゃんは内臓を深く傷つけていて、治療の甲斐なく亡くなってしまった。
当時担任だったという先輩の保育士からそのことを聞いて、とても胸が痛んだことを覚えている。
由衣先生は緊張して、「ちかちゃんのお父さんですか」と言った。
男性は静かに目礼して、懐からぬいぐるみを取り出した。
小さなクマのぬぐるみだった。


418 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:49:30.01 ID:a0GyUdbC0
「ちかの好きだったぬいぐるみです」
これを、園庭に埋めてもらえないだろうか。男性は深く頭を下げてそう頼むのだった。
「私は明日この街を去ります。せめてちかが、この街で生きていた証に」
由衣先生は最初断った。
しかし、繰り返される男性の懇願についに折れてしまった。
「ありがとう。ありがとう。きっとちかもお友だちと遊べて幸せでしょう」
涙を拭う男性の姿に、思わずもらい泣きをしてしまいそうになったが、
男性が去ったあと、託されたぬいぐるみを手にして由衣先生は少し薄気味が悪くなった。
最後の言葉。まるであのお父さんは、このぬいぐるみがちかちゃん自身であるかのように話していた気がする。
どうしよう。
捨ててしまおうか。
そう思わないでもなかった。
しかし結局、由衣先生は、男性の想いのとおりそのクマのぬいぐるみを園庭に埋めてあげることにした。
捨ててしまうことで、お父さんの、あるいはちかちゃんの恨みが自分自身に降りかかって来るような気がしたのだ。


419 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:50:46.47 ID:a0GyUdbC0
花壇の方へ埋めようかとも思ったが、誰かに掘り返されるかも知れない。
それにお父さんは『園庭に』と言いながら、園庭の真ん中を指差して頼んでいたのだ。
フェンスの根元のあたりなどではなく、園児たちが遊ぶその園庭の真っ只中に埋めて欲しい。そういう希望なのだった。
由衣先生はその夜、苦労してスコップで穴を掘り、園庭の真ん中にぬいぐるみを埋めた。
そして上から土を被せ、何度も踏んでその土を固めた。
最後に物置から出してきたトンボで地ならしをして、ようやくその作業が終わった。
どっと疲れが出て、残っていた書類も仕上げないまま、家路についた。


420 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:52:41.51 ID:a0GyUdbC0
そんなことがあった数日後だ。
十一時ごろに雨が降り始め、
わあわあ騒ぎながら子どもたちが園舎に駆け込んでいくのを二階の一歳児の窓から見ていた。
雨脚は強くなり、やがて土砂降りになった。
受け持ちの子どもたちに食事をさせ、そして寝かしつけている間も気はそぞろだった。
『雨でぬいぐるみが土から出てきたらどうしよう』
しっかり踏み固めたつもりでも、やっぱり周りの地面より柔らかくて土が流されてしまうのではないだろうか。
そう思うといてもたってもいられなかった。
もし園庭に埋めたぬいぐるみが園長先生にでも見つかったら、大目玉だ。
ちかちゃんのお父さんにどうしてもと頼まれた、と言っても、
そんな言い訳が通じないことはこれまでの付き合いでよく分かっている。
子どもがみんな寝てしまった後もしばらく迷っていたが、とうとう由衣先生は決意して部屋を出る。


421 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:54:12.44 ID:a0GyUdbC0
二階から階段で降りると、すぐに玄関の方へ向かうと事務室からは見つからない。
傘立てから自分の青い傘を手に取り、それを広げながらサンダルをつっかけて外へ出る。
外はまだ黒い雲に覆われて薄暗いが、雨脚は少し弱まって来ているようだ。
ぬかるんだ土に足を取られながらもようやく園庭の中ほどまでやってくる。ぬいぐるみを埋めたあたりだ。
しばらく傘をさしたまま、その場で無数の雨が叩く地面を見回していたが、
どうやらぬいぐるみは土から出てきてはいないようだと判断する。
大丈夫かな。


422 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:55:18.77 ID:a0GyUdbC0
少しホッとして玄関の方へ戻っていく。雨に多少濡れても早足でだ。
もしこの大雨の中、外に出ていることを他の先生に見つかると、言い訳が面倒だ。
もし見つかったら、鍵かなにかを落としてしまって探しにいったことにしよう。
そう考えながら歩いていると、ふいに視界に白い光が走り、間髪いれずに雷が鳴った。
それほど音は大きくなかったが、かなり近かった気がして思わず振り向いた。
しかし特に異変はなかった。
園舎に早く戻ろうと、玄関に足を向けかけたとき、
一瞬、視界の端にあった木の枝に緑色のタオルがかかっているのが見えた……



423 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:57:04.53 ID:a0GyUdbC0
「私じゃないんです」
もう一度そう言って由衣先生は啜り上げた。
部屋に戻って、しばらく経ってから悦子先生の悲鳴に驚いて外を見てみると、
雨が上がった園庭に魔方陣が描かれていたのだという。
さっき外に見に行った時には、そんなもの影も形もなかったのに!
そう思うと怖くなってしまった。
自分が外へ出ていたことを話してしまうと、ぬいぐるみのことがバレてしまうかも知れない。
まして魔方陣を描いた犯人に疑われてしまうかも知れないのだ。
由衣先生は、外へ出たことを黙っていようと心に決めた。
悦子先生たちが怪奇現象専門の探偵にこの事件のことを依頼するといって盛り上がっていても、
そっとしておいて欲しいという気持ちだったが、
仲間はずれにされることが怖くて、流されるままにお金も出し、こうして休みの日に園へ出て来ているのだった。


424 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:58:51.06 ID:a0GyUdbC0
「でも私じゃないんです」
声を震わせる由衣先生を見下ろしながら、師匠は困ったような顔をした。
あの顔は、謎が解けてないな。
僕はそう推測する。
そもそもこの事件には、
魔方陣を描いた犯人が保育士の誰かであれ、園児であれ、また門扉やフェンスをよじ登った侵入者であれ、
大雨の後、魔方陣がくっきり残っているのに、足跡が残っていないという重大な問題がある。
結局そのことはたな晒しにしたままだが、
師匠的には雨の中外へ出ていた人物が見つかれば、そのあたりも勝手に告白してくれるだろうと踏んでいたに違いない。
しかし由衣先生は、自分ではないと言い張っている。


425 :保育園後編:2012/06/16(土) 19:59:39.63 ID:a0GyUdbC0
辻褄は一応は合っているし、ちかちゃんのお父さんのお願いから始まるあの話がとっさの作り話とも思えない。
おおむね本当のことを言いながら、魔方陣を描いた部分だけを上手く端折って話したにしても、
その動機や、足跡を残さずに魔法陣だけ残してその場を去ったウルトラCに関するエピソードが、
こっそり入り込む余地があるようにはとても思えなかった。
「うーん」
師匠は頭を掻いている。
そう言えば、ここ数日風呂に入っていないと言っていたことを思い出した。
困った末なのか、単に頭が痒いのか分からないが、しかめ面をして唸っている。
泣いている由衣先生の背中をさすっている他の先生たちも、困惑したような表情をしている。
麻美先生など、露骨に不審げな顔だ。
「今の話が本当だとするとですよ」
師匠はようやく口を開く。


426 :保育園後編:2012/06/16(土) 20:00:20.93 ID:a0GyUdbC0
「雷が鳴って、五歳児の部屋から悦子先生がカーテン越しに外を見た時、まだ由衣先生は外にいたことになる。
 どうして見つからなかったのかという問題が……
 ああ、いや、そうか。玄関の近くまで戻っていたら、角度的に五歳児室からは見えないか。
 ううん。まあとにかく、雨が弱まり始めたころ、まだ魔方陣は現れていなかったわけですよね。
 雷が鳴って、由衣先生が園舎に戻り、しばらくして雨が止む。その雨が止んだ二時ごろに悦子先生が外に出る。
 あまり時間がありませんね。
 一体誰がどのタイミングで、どうやって?」
後半はほとんど独り言のようになりながら、師匠がなにげなく窓の外を見た時、その動きがピタリと止まった。
「なにっ」
緊迫したその声に、思わず視線を追って窓の外を見下ろす。
園庭の真ん中。
さっきまでなんの異変もなかったその園庭の真ん中に、なにかがあった。
師匠が窓から飛び出しそうな勢いで身を乗り出す。

「『保育園 後編』2/2」に続く

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